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2015.11.26

編むひと。
寺田 栄子さん


大阪市在住
パン屋店員

「日常のバタバタした中でも、少しでもゆったりとした時間を作りたくて編み物をするんです。」
そう、お話してくださる栄子さんは旦那さまと2人のお子さんとの4人暮らし。
数日前、知り合いのパン屋さんのオープンの日に買い物に行くと、
とっても忙しそうだったので、見兼ねて「手伝おうか?」と一言。
これがきっかけで、急遽そのパン屋さんで働くようになりました。
忙しいけど楽しんでますよ、と栄子さん。
編み物の時間は、そんな忙しい日常からちょっと一息つきたくて。



お話の間も食事の用意など、くるくると忙しそう。
そんな家事の合間にお気に入りのリビングで
「編み物の良いところは、家事の合間に少しづつでも手をつけたり、
用事がすっかり終わった夜に集中して編んだり、自分のペースで続けられるところ。
そうやって、ゆっくりでも作品が仕上がっていくのが喜びに繋がりますね。」
毎日だったり、時々だったり。
 
編み物は気付けばずっと続けていて、特にこれといったきっかけはなかったそう。
「しいていえば、母親の影響なのかも。」
編みたい物があると編み図を見ずにサクサクと編めるようで、
サイズなんかも調整出来るようです。
長年の勘というのは本当にすごいですね!



今編んでいる物も見せてもらいました。
4歳の息子くんの帽子です。
すぐにおっきくなる息子くんのために毎年季節ごとに帽子を編んでいるのだとか。
元々は生まれてすぐにかぶせられる帽子をさがしていたそうなんですが、
良いのがみつからず、ご自身で編んだ事から、
それが季節の習慣になっているのだそう。
素敵ですね!
 
今年でだいたい9つめ。
これからもどんどん増えていくのが嬉しい記念になりますね。



お好きな糸についても聞いてみました。
「冬は薄くてかさばらないけどあったかい、アルパカなどの毛糸がいいですね。
肌触りが気持ちよくって。モコモコした毛糸よりは、かさの低いものが好きです。
夏場はさらりとした麻の糸などを使用することが多いですね。
編み上がりのシャリっと感が良いんです。
赤ちゃんのものなんかはオーガニックコットンを使う事も多いです。
色目も自然な色、ちょっと抑えめの、地味な色が好きなんですよ。
地味だけど、何にでも合わせやすいし、使い勝手が良いでしょ。」



そう話しながら大人色の毛糸が入った古いビンと編み物セットを持ってきてくださいました。
このビンは海苔の瓶だそう!いい雰囲気です。毛糸を入れるのにもピッタリ!
編み物道具はお母さんからのお下がりだったり、ご自身であつめられたり、と様々。
その中でも一番のお気に入りは、10年前ぐらいに古道具屋で見つけた小振りな糸切りばさみ。
とっても持ちやすくって古いのに切れ味も良いし、なにより形がかわいいのです。
このことがきっかけで古道具が好きになっていったのだそう。



古い物が好きな栄子さん。
お休みの日はよく蚤の市へ出かけるそうです。
「古い物は1点物が多いし、長年使われてきたその風合いに心惹かれるんですよね。
編み物も、いつも何も見ないで作るので同じ物は二度と出来ないんですよ。だから、1点物。笑」
 
古いけど、良く手入れされた家具にかこまれて、
のんびりと編み物をするのがとっても落ち着くのだそう。
最近購入した編み物道具をいれておく小さな棚がお気に入り。



栄子さんは食器も好きで、食器棚に収まりきらないのに、
気に入った形を見つけるとついつい手が伸びてしまうようです。
キッチン用品にもこだわりが。
Staubの代名詞とも言える黒色のココットがお気に入り。
Staubのココットは食材の旨味を逃さない構造で、
素材本来のおいしさを引きだしてくれるんです。
と教えてくださいました。
 
家事をする上で、お気に入りの物を使ったり、なければ作ったり、
そうする事で家事がいつもよりもっと楽しく出来るんです、と栄子さん。
 
編み物もそのひとつなんですね。



休憩にコーヒーをたててくださいました。
豆はいつもご自身で挽くのだとか。
こちらも蚤の市で購入された古いミル。
古いですがちゃんと良い仕事をしてくれます。
 
ゆっくりと丁寧にお湯を注いで。
コーヒーの良い香りが部屋の中いっぱいに広がります。
 
なんとマドレーヌもお手製。
 
大好きな食器に大好きなコーヒー。
編みかけの毛糸をながめながら、ほっと一息。



最後に栄子さんにとっての編み物のありかたについて、お聞きしてみました。
 
「母が自然と私の着るものやなんかを編んでくれていたように、
私も自分のこどもに自然と何か編んであげたいなと。
編み物が生活の一部になっているみたい。
特別っていう感じではなくて、
自然と普通にそこにあるもの。
うまく表現出来ないけど。そんな感じでしょうか?」
と、にっこり。
 
 
古い物を受継ぐ。
それをまた、語り継いでいく。
自然に生活にとけ込む編み物と
一緒にすくすくと育っていくこども達。
 
家族の絆を感じた
やさしいお話をありがとうございました。



写真と文:橋田有加里