DARUMA STORE


「THERIACA」のデザイナー濱田明日香さんと作ったTUBEの話

ドイツはベルリンを拠点に活動するファッションレーベル「THERIACA」のデザイナー濱田明日香さん。
その作品はかっこいいのになんだか面白く、人を笑顔にし、思わず二度見してしまう驚きと発見があります。
また、そのアイデアを誰もが体験でき、かつ実用的に使える作品が作れる手芸本を多数出版。2020年11月には初のニット本「かたちのニット」を出され、最近ではYoutubeチャンネル「ASUKA CREATIVE STUDO」を通して、編み物の魅力も発信されています。

DARUMAでは2021春夏の新製品「TUBE」の糸を一緒に作りました。
そして5月25日(火)からTUBEを使った濱田さんデザインによるKITが発売されます! 今回はTUBEの製作とKITについてインタビューも交えてお伝えします。




糸の製作が始まったのは2020年3月ころ。
どんな糸が作りたいかアイデアを出してもらい、DARUMAからはアイデアに似た構造のサンプルを送ったり、今までにない面白い糸はないかとお互いが探りました。


写真は濱田さんの初回アイデア

この時点ですでにかっこいいと社内では大騒ぎでした。
A・B:筒状のニットや布に綿が入ってるもの(Bは自ら製作)
C:登山用ロープ
D:靴ひも

いくつか候補が上がる中、デザイン性はもちろん、可能性や生産性、コスト面などを考慮しながらやり取りを続けました。 そんな中、DARUMAから送ったサンプルの中にTUBEの元となる物があり、製品化が決まりました。



ー今回TUBEが生まれたのも筒状の構造のものを提案してくださったのが大きいと思っています。糸の製作はいかがでしたか?

濱田(以下:H 前々からリリアンで編んだひもがかわいいと思っていて、その技法ですごく太いひもは作れないかとか、中綿入りのものは作れないかとか、何色か編み込んだひもは作れないかとか、いろいろ思いついたアイデアをDARUMAさんに投げました。色んな素材で編んでもらった中で、TUBEのような化学繊維で編んだひもがサンプルとしてあがってきて、ひときわパッと目を引きました。製作にはもっと時間と修正がかかるかと思っていたけど、お互い「あ、これいいじゃん。」てなりましたよね。笑

デザインのお仕事をいただいたときは、「こういうのが作りたい」と自分で100%決め込んで進めることも多いですけど、糸の専門家と仕事をしているわけだし、お互いの持ち札を出して想像していなかった着地点にたどり着いた今回のケースはこれぞコラボレーション、と思いました。
最初お話をもらったときは、編み物の需要が落ち込む夏に売れる編み糸が作れるのか正直自信がありませんでしたが、私にわざわざ依頼してくださるってことは、ただ売れそうなもの、ではいけないし、奇をてらったらいいという訳でもない。その答えとしてはちょうどいい落とし所に持っていけたんじゃないかとほっとしています。





糸が決定したので、次は色を決めていきます。候補色を出してもらい、染色工場で試し染めを行います。
写真は染色工場から上がってきた色見本。1色に対して、少し明るめや暗め、色相の差を少しずつ変えた候補が2〜4色上がるものもあります。毛羽がなく、光沢のあるナイロンの糸なので少し色を入れるだけで発色よく仕上がるのが特徴です。




ー色出しでこだわった点はありますか?

H色は意外とすっと決まりました。風合いを見たときに、合いそうな色が自然と絞られていったというか。
まず大事にしたのは元気な色。強い個性の糸だから、強い色とかけ合わせてバッグなどを編んだらつまらなくなりがちな夏のコーディネイトのポイントになるに違いないとイメージしました。全身黒、全身白にプラスしてもすごくかわいいだろうと。このへん、コーディネイトから逆算していくあたり、ファッションデザイナーっぽいですよね。笑

素材がおもちゃっぽいので白、黒、ブルーは大人っぽさを残すのに外せないと思って選びました。とにかく目を引くネオンピンク、ミントグリーン、レモンは単体でも強くてポイントになる色として、どれも早い段階からイメージしていた色です。グレー、ピンクベージュは他の強い色と配色しても馴染む、落ち着いた色としてセレクト。糸の透け感とも相まって、淡い色ならではの儚い印象がきれい。
どれか一つ選べと言われると選べないくらい全色お気に入りです。







候補の中から濱田さん、社内でも検討を重ね、商品となった8色が決まりました。




そして、うれしいことに4タイプのKIT化が決定!
デザインのこだわりやコーディネイトのポイントをお聞きしました。


マクラメバッグ&きんちゃく

H糸自体が可愛いので、この透け感と筒状の見た目を最大限に活かしたいと思ったときに、マクラメはどうだろう、と思いつきました。 ネット状なので、軽くコンパクトに持ち運べるのもいい。 持ち手に強い色をかけ合わせてよりインパクトのあるアイテムになりました。 きんちゃくも泡を身に着けてるみたいでかわいいです。







ボールバッグ

HTUBEは普通の毛糸とあまりにも質感が違うので、その質感の差が逆に面白いと思って異素材を組み合わせてみたバッグです。 お互いの素材の良さがより引き立っていると思います。ヒールとか履くようなきれいめなコーディネイトに持ってもかわいいと思います。







サコッシュ

H棒針編みで編んだ時の表情も面白くて、それを取り入れたデザインでバッグを作りたいと思いました。 棒針のボディーとかぎ針編みの額ぶちとのコントラストが面白い、大人っぽくも使えるサコッシュです。 バッグにはかぎ針が使われることが多いから、新鮮な仕上がりだと思います。







モロッコバッグ

Hモロッコを旅行したときに、チープなストライプのバッグをたくさん見かけました。 そのイメージでチープさがかわいいバッグを作ってみました。 思いっきりカラフルな多色にするか、白とのストライプにするか迷いましたが、コーディネイトに取り入れやすい白とのストライプにまとめました。 持ち手を1本にすることで、ストライプの向きに複雑さがでるところがお気に入り。







またとない機会なので編み物について他にも色々聞いてみました。


ー編み物を始めたきっかけは何だったのでしょう?

Hテキスタイル科出身なので、糸と布を使った表現の一つとして編み物という技法は学生の頃から作品に取り入れていました。あとは叔母が編み物の先生だったので、泊まり込んで教えてもらったり、ロンドンでファッションの学科に通う傍ら、ニッティングのコースもとったりして、なんだかんだでずっと興味のある技法です。
ブランドを立ち上げてからしばらくは編み物から離れていたので、今編み物熱が再燃して大変です。今後はコレクションにもニットを混ぜていけたら面白いかもと思っています。



ーかぎ針、棒針どちらが好きですか?

Hどちらもいい所があるので、選びにくいですね〜。ただ、どちらも凝った編み模様のものよりシンプルな編地が好きです。技工に凝っていくというよりは、色合わせとか形とか、デザインに凝っていくタイプだと思います。



ー別のインタビューで、「布で作品を作るときは、紙に書かずに布に直接触ってデザインを導き出す」という記事を読みました。糸の場合はどのようにデザインを導き出しますか?

H考えたことがなかったけど、糸も布のときと同じかもしれないですね。まずは糸から受けるインスピレーションで、編み方も針の号数とかもフィーリングで選んで自由に編んでみる。 できた編地からこんなかたちだったら面白いかも、と想像を膨らませて、最終形を探っていく感じ。 最初から絵にかけるほどのクリアなイメージは持たずに始めることが多いです。



ーベルリンの編み物事情で感じることはありますか?

Hドイツに手作り文化がこんなに根付いているとは、来るまで知りませんでした。 編み物も縫い物も、木工などのDIYも、気軽に作っちゃうという人も多いです。 クリエイターってわけじゃなくても、コロナ渦ってこともあり、家で編み物したり刺繍してる知り合いもいますし、なんででしょうね、冬が長いから?



ー最後に。やり取りの中で、「編み物は編む工程からかわいい」と言われているのが印象的でした。私はかわいいおばあちゃまが窓際で編み物をしている風景が浮かびました。どんな時にかわいいと思われますか?

H編んでいる風景がかわいいというよりは、糸の状態だったり、編みかけの途中の状態だったり、糸始末する前だったり、なんでか途中の状態がすごくかわいく感じるんですよね。 編み物に限らず、未完成のかわいさってあると思うんですけど、編み物の場合、やっぱり糸そのものがかわいい。完成させないと使えないんだけど、完成してないほうがかわいいと思う。全然説明になってないかも。ただのフェチかも。笑




作品製作用に送る糸の量はとても大きくなるので、できるだけ小さく圧縮して荷造りをしています。ダンボール箱ぎゅうぎゅうに詰め込まれる糸に対して「ちょっとの間、我慢しもらおう〜」と言っていた濱田さん。独創的な作品も糸との対話で生まれているかもしれません。



ASUKA HAMADA × DARUMA TUBE BAG KIT
発売予定日:2021年5月25日(火)※12時ころを予定しています。
・マクラメバッグ&きんちゃく 4950円(税込)
・ボールバッグ 6930円(税込)
・サコッシュ 5940円(税込)
・モロッコバッグ 11880円(税込)






濱田明日香 / ASUKA HAMADA
ファッションデザイナー。京都市立芸術大学、ノヴァスコシア芸術大学(カナダ)にてテキスタイルデザインを勉強後、デザイナーとしてアパレル企画に数年携わり、渡英。ファッションとパターンについて研究し、自由な発想の服作りを続けている。2014年、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション在学中に自身のレーベル“THERIACA”(テリアカ/万能解毒剤という意味の言葉)をスタート。2015年からはベルリンに拠点を移し活動を展開。ギャラリー、美術館での作品発表、ショップでの販売に加え、書籍などいろいろな方法で作品を発表してきた。著書に『かたちの服』『大きな服を着る、小さな服を着る。』『ピースワークの服』『甘い服』『かたちのニット』(文化出版局)、『THERIACA 服のかたち / 体のかたち』(torch press) がある。

www.theriaca.org
Instagram: @_theriaca_
YouTube Channel: Asuka Creative Studio