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2016.9.16

「ほぼ日」の気になるあの人
Miknits担当者のみちこさんにお話を聞きました。

編みものをされている方なら一度は目にしたことはあるのではないでしょうか?
編みもの作家・三國万里子さんの本を。
「編みものこもの」にはじまり、「編みものワードローブ」や「編みものともだち」などなど…、
新しい風が吹き抜けていくような編みものの本。
編み込み柄の色合いやセーターの形、マフラーの編み地、毛糸の刺繍、
見たとたん、可愛い〜と顔がゆるみ、吸い込まれるように見つめてしまう作品たち。

そんな三國さんが作り出す編みものに魅せられて、
ブランドまで作っちゃった方がここにはいました。

「ほぼ日」で、三國さんのデザインする編みものキットやグッズを販売する「Miknits」を立ち上げた、山川路子さんです。
「ほぼ日」とは、糸井重里さんが主催するウェブサイト、「ほぼ日刊イトイ新聞」のこと。
たくさんのゲストが登場する楽しい読みものや、心くすぐられるグッズを販売し、
1998年6月6日の創刊以来、1日も休まず更新されています。

そんな「ほぼ日」で展開されている「Miknits」のことや、
担当者・みちこさんのことが知りたくて、
お話を聞きにいってきました!



改めまして、今回の記事は牧野が担当します。

体中の水分が蒸発してしまうんじゃないか、というほどの夏の暑い日、
心臓をバクバクさせながら「ほぼ日」の事務所へ。
光があふれる気持ちの良い吹き抜けと、木目の組み合わせが、秘密基地を思わせるような空間です。
通していただいた部屋には、冷たいお茶とお菓子をご用意いただいていました。
火照った体に染みわたります〜。



笑顔がとってもチャーミングなみちこさん。
いつもとても気さくで、オープンな雰囲気が印象的です。
みちこさんとの出会いは、昨年末にメールでご連絡をいただき、
今年のはじめ、2016年1月に開催された、私たちの会社の展示会に来てくださったことがきっかけでした。
憧れていた、ほぼ日の「Miknits」の方が来てくれる! ということで、
私たちは「ついにここまで来たか〜〜!」と感動に打ち震え、そして盛り上がりました。


みちこさんが三國さんを知ったのは、
「ほぼ日」の同僚の方が資料で買って来ていた、三國万里子さんの本「編みものこもの」を手にとった時でした。
「載っている作品がぜんぶ可愛いくて!
編みものに、今までとは違うムードを感じたんです。
この人は何かあるって。そこから社内で編みものが流行りました。」

三國さんの作品に出会い、編みものにどっぷりとはまったみちこさん。
この取材のために、今までに編んだ作品をお持ちくださいました。
早速ですが、見せてくださーい!



わーーーーーーーー!



わーーーーーーーーーーーー!!



「Miknits」のミトン! 可愛いーーーーーーーーーーーーーー!!

テーブルいっぱいに広げられた色とりどりのカーディガンやミトン。



「このカーディガンは“フェアアイル”というフェア島に伝わる編み方で、
細かい編み込み柄をぐるぐると輪に編んで、筒状の胴体を切り開いてカーディガンに仕立てるんです。
専用の毛糸を使っているので、切ってもほつれないんですよ。
編み目が落ち着いて、編みものっていうより織りものっぽいかんじ。
薄手ですがあったかいです。目が詰まってるから。」

みちこさんが編んだものを目の前に、びっくりして圧倒されてしまい、うまく言葉が出て来ません。
繊細に編み込まれた柄、細かなケーブル模様、それらをひと目ひと目、ていねいに編んだ時間を思うと
何か尊いものを見ている気持ちになりました 。
1本の糸から形が出来上がるって、すごいことだ〜! と改めて思いました。

しかしながらさらりと、
「編んだセーターは人にあげたりもします。そうじゃないとタンスに入らないので!」
と笑顔のみちこさん。
この軽やかなかんじが、執着がないかんじが、「開けてる」と感じる所かもしれません。



ボタンもとっても可愛い〜。
日暮里の問屋街で買ったのだそうです。60〜80年代ごろのデッドストックの品。

「三國さんがニットにボタンを合わせるのが好きな人なので、私も。」

三國さんはよく古着屋に行かれるそう。
古着屋で探したニットや外国の古い編みものの本が、三國さんの編みものの「先生」だそうです。

「三國さんは独学で編みものを習得しているので、
一般的ではないテクニックを使ったりすることがあるんですが、
なぜこうするのか解説してください、って言うと、全部答えがあるんですよね。
発表する作品すべてをニッターさんに頼らず、自分で編んでいるからだと思います。」

と楽しそうに話すみちこさん。
私も本に掲載されている靴下を編んだことがあるのですが、
ループの作り方など、編んでいてとても面白かったです。



これまでに刊行された、三國さんの数々の著書。
その下にあるのは「Miknits」のキットのカーディガン。
使い込まれた編地にできた毛玉からも愛を感じます。

「Miknits」のはじまりを聞いてみました。

「一番始めはほぼ日手帳のカバーのデザインを三國さんにお願いしたんですよ。
ほぼ日手帳ではプリントカバーを毎年出していて、その当時は手帳開発チームだったんです。」

出来上がった手帳のカバーがとても可愛かったので、
せっかくならこの柄が編めたらと、手袋のキットを作ったそうです。
手帳売場の横に置いた手袋のキットには大きな反響があり、沢山の方が購入されました。

「予想していたより、たくさんの反響がありました。
やっぱりきっと、可愛かったからですよね。」

編みものが好きとか、編みものをしたことがあるという方達だけではなく、
キットがきっかけで始める人が多かった、というのがとても嬉しかったと話すみちこさん。



「三國さんの作品って、可愛いけど基本的には自分で編むしか手に入れる方法がないんですよ。」

欲しくて編む。逆を言えば、編みさえすれば手に入れられる。

「編みものをしている友達が言っていてなるほどな、と思ったんですけど、
編むのって時間がかかるし、みんな大変て言うんだけど、着る時間に比べたら編む時間は全然短い。
編む人の技量にもよりますが、積算すると平均的なアランセーターは60時間くらいで編めるらしいんですけど、
着る時間は1日10時間としても、何シーズンでも何回でも着られますよね。
そしてそれ以上に編む時間はとても楽しいんです。」

編む時間も楽しいし、着る時間も楽しい!
なるほど! そうですね。
私も靴下用にと奮発してカセ糸を買ったことがありました。
せっかく買ったのだから完成させないともったいない! と思ったことがありました。
けど実際編んでみると、編む時間はとても楽しく、
出来上がった靴下には愛着があるから、大切に使う。
それは、“靴下を買う”ということではなく、
編みものを楽しむ時間も、身につける時間も一緒に買うという感覚なんですね。



三國さんと共に作りあげる「Miknits」。
お二人で仕事をする上で、みちこさんがおもしろいなと感じることを聞いてみました。

「はじめはに驚いたのは、なんでもスッと作っては、それに執着しないことでした。
もっといいのが思いついたから、って全部差し替えて編んできたりして。」

それが自分の仕事のやり方にも影響を与えたというみちこさん。

「三國さんは、どんどん軽やかにやるんですよ。
それを見た時に、自分の仕事もそうじゃないといけないな、と思いました。
間違った時にほどくのってつらいじゃないですか。
でも一度作ったものに執着してたら出会えないアイデアがある。
それは三國さんから教えてもらいました。」

三國さんは躊躇無く編んだものをほどき、時にはセーターをまるごと捨てるそう…。
確かに、いいものって、納得するまで作って、壊してはまた作って、
たくさんの時間をかけて作られるものなのかもしれませんね。

ものを一緒に作っていく上で、お互いの意見が違うと、
擦り合わせに時間がかかり、大変な面もあると思いますが、
そういう局面はどうやって乗り越えるのでしょう?

「“大変だ!”って思いすぎずやってるんだと思います。サッと動く!」

「Miknits」は一度の打合せで商品企画がほぼ決まり、だいたいの輪郭が出来上がるそうです。
そこから何ヵ月もかけて、コツコツとキットやグッズを作りあげます。
三國さんに委ねている部分も沢山ある中で、それらを束ねて世に出すのがみちこさん。

編みものには、どこかやぼったさが残るイメージがありました。
それが三國さんの本が出版されたり、「Miknits」ができたりしたことで、
「こんなのが出来るんだ、可愛い」「なんか楽しそう!」
という雰囲気にだんだんとなってきたかな? と、ここ数年を通して感じるようになりました。

「Miknits」は“編みもの入口”になりたい、と話すみちこさん。
お二人がおもしろがって出来上がる商品だからこそ、
お客さまの心にも届くのだなと感じました。


今回の取材を通して、編みものに関することはもちろん、
仕事をする上での心の持ち方、在り方も、今の自分に深く響きました。
新しい企画を考えたりグラフィックデザインをする中で私は、
時間をかけて考えたこと、出来上がったものを、
崩したくない、と握りしめていることが多くなってしまいがちです。
もの作りの仕事だからこそ、もっと柔軟に手の平を広げて開いていきたいな〜と感じたのでした。
みちこさんを通して、関わっている沢山の方々からも教えを受けたような貴重な一日でした。



続きまして、取材の後に、ほぼ日社内で月2回ほど開催される“編み会”に、私たちも参加させていただきました!



夕方19時、ほぼ日乗組員の皆さんが各々のデスクから大きな机のある打合せスペースに集まって来ました。
おのおの、編みかけのものを広げて、わいわいと始まります。

この“編み会”は、「Miknits」をきっかけに編みものをはじめようとした有志が、
せっかくだから集まって編もう! となったのがはじまりです。
それが2回、3回と回数を重ね、今や3年目。



「こんなに長くなったよ〜」
見せてくださったマフラーに歓声が上がります。
すごーーーーーーーい!!



みちこさんをはじめ、編める人が先生になって教えてくれるので、ぜんぜん編めなくたって大丈夫!
みんなでおしゃべりしながら編んでいます。
仕事のことだったり、お家のこと、趣味のことだったり、恋愛相談だったり!
誰でも仲間に入れて、誰でも楽しめる空間。
大人の部活動だな〜。
すごいなぁ〜「ほぼ日」。
私たちもこんな楽しいこと、できたらいいなぁ。

※壁にある“パン屋”の文字は、この会議室の名前。
スタジオジブリ制作の映画『魔女の宅急便』のキキがパン屋さんで店番している原画が飾られているため、この名前に。
他の会議室にも全て名前が付いています。おもしろいですね〜。



編み会のメンバーにもこれまで編んだものを見せていただきましたよ!
なんて素敵なセーター!!
めっちゃ可愛いです〜。
お二人ともとっても似合ってる!


今年もまた、編みものの季節がやってきました!
「Miknits」の今年のニットも始まりましたよ。
さあ、この秋冬は何を編みましょうか。

「Miknits」
http://www.1101.com/store/miknits/



写真:横田株式会社 横田
文:横田株式会社 牧野