2016.1.28
編むひと。
藪下 麻祐子さん
大阪市在住
yoga インストラクター
ご自宅におじゃました第一印象は、森の中に足を踏み入れた感覚でした。木の枝やツルに葉っぱ、それらで作られたリースが飾られた温もりのあるリビング。
今回お話をお伺いしたのは、DARUMA STOREでもモデルをお願いしている麻祐子さん。普段はyogaのインストラクターをされています。お子さん二人と旦那さん、そして大きな犬と暮らしています。自然が大好きで、お部屋にある植物たちは森や山へ行った時に拾ったものだそう。民族調の手仕事のクッションカバーや人形は、ちょっと懐かしい感じもします。
ご自身で糸を染め、糸紡ぎもされるというので驚き!
麻祐子さんと毛糸の出会いを聞いてみました。
「小さい頃から当たり前のようにおばあちゃんやお母さんが編み物をしてましたね。
はじめて毛糸にさわったのは、あやとりをした時かな」
あやとり!子供の頃に毛糸を少しもらって、あやとりで遊んだことを思い出しました。
橋をつくったり、ほうきをつくったり、二人あやとりは同じことのくり返しなのに止まりませんよね。
麻祐子さんのこのお家も、おばあちゃんの家に遊びに行ったような懐かしい感覚になるのもそんな所からかもしれません。
編み物や手づくりは、どんな時間にされるのでしょう?
「一日の内で出来る時間としたら、夜子どもが寝てからですね。」
それはどういった時間なんでしょう?
「一日の最後の時間って、特別ですよね。
自分がこの時間になにか手仕事をするっていうのは、くつろぎでもあるし、幸せな時間。
整える時間です。」
光が差し込む気持ちのいい部屋。
麻祐子さんの隣りにはいつも犬のシルバがぴったり寄り添っています。
「何も考えずに坦々とする作業。
編むとか、縫うとか、そこに集中しているようで集中していなくて。
なんというか、瞑想状態かな。」
麻祐子さんの毎日は朝から夕方まで忙しく、yogaのレッスンを様々な教室で掛け持ちしている人気講師。
この日もレッスンの合間にお話を聞くことが出来ました。
先ほどから少し出てくるキーワード“整える”や“瞑想”、yogaの世界と通じるものがあるようです。
呼吸を整えるかのように穏やかにお話は続きます。
「ほんと、整えるんですよね。yogaのように内側を整える感じ。
ちょっと呼吸が乱れて早いペースになってたりだとか、生活リズムが早かったりだとか、
子供ができて自分の時間をとれなくなったりだとか。
そういう時にやると心に余裕が生まれたり、
逆に時間があるときにそれをやると、それはそれで幸せでしょ?」
確かに。忙しい時、頭の中ばかりで考えてしまう時、
何か手を動かしてそこに集中していると、頭が真っ白になって気持ちがクリアになる気がします。
yogaについて、もう少しお話を聞いてみました。
「出会いは10年くらい前。最初は美容の仕事をしていたんです。メイクの学校の講師を。」
その当時の麻祐子さんは今とは違い、すぐに体調をくずしてしまったり心身共にとても疲れていたそうです。
そんな時にちょうど見つけたyoga。
「その頃は今みたいに沢山スタジオがなくて、私の初めてのきっかけはホットyogaからでした。
そこからいろいろなyogaを試していくうちに酷かった冷え性や肩こりが治っていきました。
身体の強張りがとれたら、気持ちもふんわりゆるんでいきました。
気がつくとyogaが生活の一部となっていました。」
そこから先生になろうと決めたのは?
「なんだろ、、言葉にするのは難しいですが、自然にやってきたって感じです。
人生の分岐点でもあったし、元々好きだった手仕事とyoga、どちらもこれからの自分の人生に必要だから、自分自身がより学んでいくためにもしっかり学びたいと思いました。共通する所もあるし、今の自分にはどちらも大切です。」
麻祐子さんは何時間でも座れる体になるためにもyogaをします。
体を整えていると手仕事も長く座って出来るようになります。
今はご自身が藍染めして紡いだ糸で、帽子を編まれてました。
毛を刈ってもらったひつじの毛を、紡いでから染めたり、染めてから紡いだりもします。
「人が作ったものって、そこに命が入っているから。
やっぱり温もりが違うんです。
それは木や植物も同じで、必ずエネルギーってあるでしょ?
編み物も同じで、ひつじからのエネルギーを感じます。
生きているものをさわっていると安心するんです。」
呼吸を大切にする麻祐子さん。
生きているものにも呼吸があり、それに合わせるのでしょうか?
「合わせるっていうよりも、自然に合うんじゃないですかね。
昔は呼吸が浅くて息を深くできなかったんです。
森や川、景色のきれいな所へ行くと自然と呼吸が深くなる、そんな感じです。」
カゴの中に入ったカラフルな色の糸。
スピンドルで糸を紡ぐ所を見せてもらいました。
色々な色を合わせたふわふわの原毛を細く取り出しながらスピンドルを回し、糸になっていきます。
「同じように出来ないのが楽しいです。
あえて太く紡いだり、細く紡いだり。
ぽこぽことした感じの糸をシンプルに編むのが好きなんです。」
使い込まれたスピンドルや編み針。
麻祐子さんのお母さんが使っていた道具だそうです。
「木や自然が好きです。
極力自然に近いものに惹かれますね。」
そうお話しするテーブルやイス、使い込まれた木の表情が優しく包み込むようです。
糸車を見せてもうらべく、お部屋の移動中に見つけたウーパールーパー…!
いろんな生き物が隠れていそうなお家。
糸車で糸を紡ぐ様子を見せてもらいました。
足のペダルを踏んで回すと、原毛から糸が紡がれていきます。
細く長くきれいな毛糸がみるみる出来上がっていきます。
麻祐子さんの側にはやっぱりシルバがぴったり。
最後に、いつものトレーニング風景を見せてもらいました。
静かにしなやかに、人の身体はこんなにも柔らかく力強い動きをするのですね。
日々、yogaやもの作りで呼吸を整える麻祐子さん。
目には見えないエネルギーが循環して発せられるパワーを
こちらも沢山いただいたような、濃密な時間でした。
写真:平野 愛
文:横田株式会社 牧野