DARUMA STORE


2016.1.14

本社ビル解体
横田株式会社の事務所の話

私たち横田株式会社は40年間もの間、本社として使用していた大阪の本社ビルを老朽化により取り壊すため、昨年の5月に本社を仮移転しました。糸とは関係のない話ですが、少しこの場を借りてご紹介できればと思います。

このビルが建てられた1976年(昭和51年)は、健康ブームから家庭用のルームランナーがバカ売れし、VHS方式とベータ方式による、かの「ビデオ販売戦争」勃発した年だったようです。私たちの会社では、ダルマの家庭糸を10g巻から100m巻に変更した年で、縫糸やレース糸をはじめとする綿素材の商品だけでなく、毛糸の販売に力を入れていた頃でした。

それから40年間近く、私たちはこのビルの中で働いていました。40年もの時間が経つと、事務内は空調の効きが悪く、窓からは隙間風が入ってきます。夏は暑く、冬はとても寒い事務所でしたので、ひざ掛けをしながら働いている人が、たくさんいました。

竣工当時は1Fの倉庫からお客様へ商品をお送りしていたようで、ビルの中には電算室(コンピュータ室のようなもの)から倉庫の出荷場へ伝票を送るためのエアシューターがあったり、その更に前の事務所から持ってきた砂の入った黒い大きな金庫があったり、普段目にすることがないものが色々とある不思議な建物でした。

そんな何十年間、全員にとって当たり前だった毎日の風景が、無くなってしまう。
引越しの準備を進めるにつれて、なんだかとても寂しい思いが込み上げてきていました。

そのころ、たまたま不動産の写真を中心に撮影されている写真家の平野愛さんとご縁があり、取り壊す前のビルの姿を撮影してくださることになりました。建物の竣工写真を撮影することはよくあると思うのですが、取り壊されてしまう建物を写真に残すというのは初めての経験です。撮影は引越予定日の1週間前に急遽行うことになり、社内はまさに荷物がひっくり返った状態でした。綺麗でない部分もたくさん写っていますが、今となっては逆にありのままの姿を収めていただけて良かったと思っています。

撮影時は5月、ビル正面の植木の白い花がとても綺麗に咲いていて、その姿は、まるでこのビルを見送ってくれているようでした。

会社と社員を40年近く守っていてくれた建物です、しっかりと心に刻んでおきたいと思います。
本当にお疲れさまでした。




写真 平野愛
文 横田株式会社 横田