DARUMA STORE

2015.12.3

あったかい紙

その印刷屋さんは大阪の大動脈、御堂筋から西へ少し歩き、公園とオフィスビルが共存する落ち着いたエリア江戸堀にあります。
お店の名前は江戸堀印刷所。なにわ筋の東側に面しているそのお店には、心地よい光がたくさん入ります。
母体である大阪の印刷会社のあさひ高速印刷さんが、2011年に作られたお店です。



店の外から見える一番良い場所には、年代物のクラシックカーのようなたたずまいの古い印刷機が設置されています。圧倒的な存在感を放っているこの印刷機は、1960年代に旧西ドイツで作られたハイデルベルグ社の活版印刷機で、今も現役で動いています。
今はもう製造されていないこの印刷機は、職人さんの手で大切にメンテナンスしながら使われています。



活版印刷とは活字を組み合わせた版にインクを塗って紙に押し付けながら印刷する方式で、印刷したところが版に押されて凹んで見えるのが特長です。活版印刷で印刷された文字を指で触れると、より紙の質感を感じることができ、細部に宿る美しさを感じます。
DARUMA STOREで販売している商品につけている紙の印刷もこちらにお願いしていて、紙の凹み具合を決める圧の強さを、現場で印刷機を動かしながら調整してくださいました。

動き出すと店中にガッシャン、ガッシャンと印刷機の音が響き渡ります。→ 



印刷機を慣れた手つきで動かす長岡さん、このお店がオープンして高校の実習以来何十年ぶりに活版印刷機に触られたとか。
いつも思うことですが、機械をさわる職人さんの手はとてもカッコ良い!つい写真を撮ってしまいます。



このお店を運営する会社、あさひ高速印刷さんは企業向けの印刷を行う会社ですがどうしてこのようなお店を作られたのでしょうか?

お店の運営を担当されている小野さんに話を伺いました。




「活版印刷はやってるんですけど、お店の名前に活版とは入れてないんです。印刷全般の相談ができるところにしたかったので。」

と小野さん。

一般の方には印刷物を見てもられることが多くても、どうやって作られているか?を見てもらえる機会がなかったので、この場所を作られたそうです。時には、お店の前を通る小学生が指をさして面白がってくれることもあるそう。
印刷をもっと身近なものに感じてほしい、そんな思いが伝わってきます。

打ち合わせテーブルの上には、たくさんの名刺やショップカードのサンプルなどが並んでいます。



色々な種類の印刷物が並んでいるだけで心がワクワクしてきます。まるで雑貨店のポストカード売り場。
今まで見たことのない紙やインクの色を見ると、想像が膨らみます。

印刷費用は版の大きさや、紙の通し枚数、紙のサイズなどで価格が変わってくるのでとても複雑です。江戸堀印刷所は作りたいイメージや予算を伝えると、親身になってアドバイスをしてくれる、まるで町の印刷相談所のような所です。



活版印刷はインクを手動で洗ったり、何度も調整したり、本当に手間のかかる印刷なんだな、と現場を訪れて感じました。でも、だからこそ、この印刷所で刷られた紙は、いつものものより少し”あったかい”気がします。

「人の体温を感じることができる紙」

大切に使わせていただきたいと思います。


写真と文 横田株式会社 横田